『16ブロック』の濃縮
外見も性格もまったく違う2人がちぐはくな会話を交わしながら物語が進行するコメディーはニール・サイモンの十八番だけど、それを刑事と犯罪者という組み合わせのアクションものに仕立てたのは『48時間』あたりだろうか。ロバート・デ・ニーロの『ミッドナイト・ラン』なんかも、そのバリエーションみたいな作品だった。
『16ブロック』は『48時間』の設定をそっくりそのままいただいた映画だけど、時間と空間をぎゅっと濃縮することによって面白さを出している。
許された時間は48時間ではなく、2時間。 NY市警の刑事ジャック(ブルース・ウィリス)は証人のエディ(モス・デフ)を2時間以内に裁判所へ護送しなければならない。ジャックに命じられた時間は映画の上映時間(101分)に近いから、物語はほぼ同時進行で展開する。このあたりは『24』と同じ。
空間は警察署から裁判所までの16ブロック。マンハッタンの16ブロックといえば2キロ足らずだろうか。チャイナタウンやバワリーが舞台。望遠系のレンズを使って町と人のごちゃごちゃ感を強調しているのが、時間空間を濃縮したことに見合って効いている。バワリーはひと昔前は殺伐として1人では歩きたくない町だったけど、ずいぶんきれいな普通の町になったみたいだね。
かつての敏腕、今は飲んだくれ刑事ブルース・ウィリスと町のチンピラ、モス・デフが交わす会話も、汚れた警官のことを証言されたくない市警幹部がそれを阻止しようとするストーリーも、まあお約束みたいなもんだけど、撮影にNY市警の協力を得るためか、ラストがまともすぎるのがちょっと興ざめ。もう少ししゃれてほしかったな。
でも『リーサルウェポン』で名を上げたリチャード・ドナー監督の職人技に安心して身を委ねられる映画。ブルース・ウィリスの老けぶりはどこまでがメイクと演技で、どこまでがほんとうに老けたんだろう。心配になります。
Comments