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May 14, 2006

『受取人不明』(DVD)

キム・ギドクの映画に1970~80年代の日本映画、特に日活系の匂いを感ずるのは僕だけだろうか。彼がこの時代の日活(ロマンポルノ)を見ているのかどうかは知らない。見ているのかもしれないし、見ていないかもしれない。そういう直の影響関係というより、時代のありようが似ているのかもしれない。

キム・ギドクも70年代日活映画も、性と暴力が素材として取り上げられる。ノスタルジックな風景と、高度成長によって変貌する都市風景とが入り乱れている。近代化によって家族や人間関係が崩壊し、あてどなく漂白する心情が好んで描かれる。「思い」の強い映画。

神代辰巳(『恋人たちは濡れた』)、田中登(『人妻集団暴行致死事件』)、相米慎二(『ラブホテル』)、日活系ではないけれど柳町光男(『さらば愛しき大地』)、ピンク系で時代も新しいけど瀬々敬久(『黒い下着の女 雷魚』)、そういった映画と共通の匂いがある。

『受取人不明』で思い出すのは、根岸吉太郎の『遠雷』だ。変わりゆく農村を舞台にした青春群像。『遠雷』は農業を営む青年たちと都市化した団地住民との接点にドラマが生まれたけど、ここでは農村の新旧世代に加えて米軍基地との接点でドラマが生まれる。

この映画では、いつもの暴力的な描写より悲しいユーモアがいい。主役の3人の男女がそろって眼帯をして歩くシーン、主人公の青年が門前の地面を踏み抜くと朝鮮戦争当時の骸骨が現れるシーン、もう一人の主役が凍った田に上半身を突っ込んで死ぬシーンなんか、クストリッツァのような、ずぶといユーモアと悲しみ。

『魚と寝る女』や『悪い男』のように「思い」の強さ激しさを描くのではなく、ちょっと距離を置いて主人公たちの生きていくさまを見つめている。それがまたいい。

(後記)宮台信司が自分のブログでキム・ギドクと日活ロマンポルノを関連づけて論じている。いかにも彼らしい読みで、参考になります。

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