ディジー・ガレスピーの音色
ディジー・ガレスピーのトランペットの音色はいいなあと、『ザ・チャンプ』(savoy)を聴いて改めて思った。チャーリー・パーカーとともにビバップをつくりあげたスピード感や新鮮なアドリブに、すごいと感じたことはあっても、いい音色と感じたことはなかった。
それは、僕の聴いたのが1940年代から50年代初期の録音が多く、音がどこかヴェールをかぶったように聞こえていたからだろう。デジタル・リマスターされたこのシリーズの音は、1951年録音というのに、その場に立ち会っているような臨場感がある。
突き抜けるハイノート。明るく力強い中低音。ガレスピーって、こんないい音出してたんだ。一世代若いマイルス・デイビスとは対照的。というより、マイルスはガレスピーを意識しながら自分の個性を探って、細く消え入るようなミュートの音に行き着いたんだろう。
このアルバムのもうひとつの聴きどころは、ガレスピー・バンドの錚々たる顔ぶれ。ミルト・ジャクソン、パーシー・ヒースという後のMJQ組、J.J.ジョンソン、ケニー・バレル、ウィントン・ケリー、そしてジョン・コルトレーン。「キャラバン」「スターダスト」「バークス・ワークス」などなど、おなじみのナンバーをビッグバンド風な楽しいサウンドで。
ミルト・ジャクソンは大きくフィーチャーされて、のりのいいヴァイブを聞かせているし、ウィントン・ケリーは短いながら、ころがるようにリズミックなピアノを弾いている。新人コルトレーンはまだアドリブを取らせてもらえない。
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