「ALWAYS 三丁目の夕日」
「ALWAYS 三丁目の夕日」は時代考証・VSX命の映画だね。出だしの長い1シーン1ショット、軒をかすめて飛ぶ模型飛行機とともに昭和33年の東京、木造やモルタル造の下町の商店街が映し出される。まだ舗装されていない道路をミゼット(初代のオート三輪ハンドルではないが)が走り抜けたとき、おお、よくぞ見つけてきた、と思った。
オープン・セットとミニチュア撮影、当時の大道具・小道具が総動員されて、高度成長以前の東京がVFXによって再現されている。山崎貴監督の「ジュブナイル」も「リターナー」も未見だけど、今までに見た日本映画のVFX--「スパイ・ゾルゲ」の戦前の上海や、「血と骨」の戦後の大阪--に比べ雲泥の差。
僕は2人の主人公の少年と同い年、昭和33年に小学校4年だから、この映画に出てくる街路や家のたたずまい、行き交う人々の服装、駄菓子屋に並ぶクジや鉄砲のおもちゃや月刊少年誌にいちいち納得がいく。見る者を驚かす、これ見よがしの映像ではなく、こういう失われた風景の再現に使われるVFXは好感が持てる。
役者もそれぞれにいいけど、東北弁まるだしで頬ぺたの赤い少女を演ずる堀北真希が、「パッチギ」の沢尻エリカに劣らずかわいいね。小雪も美しいけど、洗練されすぎて昭和30年代の女という感じはしなかった。
西岸良平の連載の何本かを組み合わせたらしい物語は、お定まりの笑いと涙の「感動もの」。ノスタルジックなホームドラマで、それ以上でもそれ以下でもない。僕もいくつかのシーンで思わず泣かされてしまったけど、「さあ、ここで泣け」って演出の意図が透けて見える映画は、天の邪鬼だから涙しながらもあんまり好きになれない。
客は入っているようだから、来年は続編が出来て東宝の正月映画になるかもしれないな。
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