ウォーレン・ウルフはウェスになれるかな
「INCREDIBLE JAZZ VIBES WARREN WOLF」のジャケットを見て思わず、なにこれ、って笑ってしまった。だってウェス・モンゴメリーの名盤「THE INCREDIBLE JAZZ GUITAR OF WES MONTGOMERY」(写真右)のパクリというもおろか(パクリには後ろめたさがある)、これはもう堂々たるコピーだったから。ウェスはこのアルバムのヒットで一躍有名になったから、それにあやかろうってことか。ジャケット・デザインは日本人の手になるらしいけど、どうもね。
それにしてもヴィブラフォンのアルバムとは珍しい。70年代のゲイリー・バートンやボビー・ハッチャーソン以来、ジャズ・ヴァイブを久しく聴いたことがなかった。たまに聴くのは定番中の定番、MJQとミルト・ジャクソンばかり。
1曲目の「I Hear A Rhapsody」。普通はミディアム・テンポで演奏されることの多いこの美しい曲が、猛烈なアップ・テンポで演奏される。ウォーレン・ウルフのヴァイブ・ソロは、聴いたことがないようなスピードの超絶技巧。ちょっと、これは選択を間違えたかなと不安になった。
最近の若いジャズ・ミュージシャンは誰も彼も、とにかく驚くほど巧い。巧いなあと感心はするのだけど、聴き終えて心に響いてこない。そんなことが重なって、新人のアルバムを不見転で買うのは警戒するようになった。このウォーレン・ウルフも警戒しながら買ったのだけど、ライナーを読むとクラシックのヴァイブ奏者としても活動していると書いてあり(テクニックあるはずだ)、しかも1曲目が超絶技巧だったので、またしても、と思ってしまったのだった。
でも聴き進むうちに、4曲目のバラード「Masquerade Is Over」あたりから、うーん、やるじゃない、と思えてきた。音がエモーショナルだし、軽いタッチが心憎い。殊に3曲あるオリジナルが聴かせる。
オリジナルの1曲目「Why Is There A Dolphin On Green Street」は、タイトルからも分かるようにスタンダード「On Green Dolphin Street」をヒントにつくられた曲。メロディーが引用されるし、ベースとピアノのバッキングが誰だったかの盤(よく聴くのに、思い出せない。年だね)にそっくり。ウルフのソロが軽快だ。
「Howling Wolf」はブルース・シンガーの名前をそのままタイトルにした熱い演奏だけど、泥臭いブルースっぽさは薄い。マルグリュー・ミラー(懐かしい!)のピアノはマッコイ・タイナーみたいだし、ウルフのソロも洗練されてる。
オリジナルの3曲目「Lake Nerraw Flow」は一転してクールな曲。ベースが印象的なフレーズを繰り返し、その上に乗るミラーとウルフのソロが気持ちいい。
他にスティービー・ワンダーやハービー・ハンコック、モンクの曲なんかも演っている。パクリ元の盤に入っているウェスの曲「Four On Six」も入っているのはご愛敬。でも演奏はウェスばりに熱く、興奮させる。
買ってきて1週間、毎日聴いているけど、だんだん好きになってきた。1週間聴いていると、飽きるものは飽きる。好きになってきたということは、これからもよく聴くことになるかもしれない。
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