新宿で写真展2つ
迫川尚子「ダンボール村 96.1.24-98.2.14」(BERG)
新宿で写真展を2つ回った。
西口・三井ビルのエプサイトでは荒木経惟「飛雲閣ものがたり」(~11月3日)。
飛雲閣は京都の西本願寺境内にある楼閣。普段は一般公開されていないので、僕も塀越にながめたことしかない。金閣・銀閣と並ぶ京の三名閣のひとつで、聚楽第から移築されたと伝えられる。秀吉の聚楽第といえば金ぴか趣味という先入観があるけれど、もし本当とすれば、三層で左右非対称の木造建築は洗練された品の良さを感じさせて、聚楽第に対する興味がつのる。アラーキーの写真は、この建築をモノとしてではなく風景として撮影している。
エプサイトはエプソンがやっているギャラリーで、プリントはいつもデジタル出力(撮影はフィルム・カメラのことも多い)。このプリントを見ていると、すでに銀塩のプリントを超えているな、と思う。
迫川尚子「ダンボール村 96.1.24-98.2.14」(~9月30日)をやっているBERGは、東口駅ビルの地下、改札を出てすぐのところにあるカフェ。食材の質と味にこだわりの店で、僕はここでいつもコーヒーやギネスを飲み、小腹がすいているときはランチを取る。狭い店内の壁を使って、時々、写真展が開かれている。
迫川はこの店の副店長で、新宿のストリート・スナップを集めた写真集も出している写真家。今回のは、かつて西口地下にあった「ダンボール村」を記録したものだ。迫川は2年間、毎日、この「村」に通ってホームレスたちとつきあった。彼らの肖像や、ダンボール・ハウスに描かれた絵を撮影したプリントが壁いっぱいに貼られている。
彼女は「これは自分に向けて言うのですが、ホームレスが現実の問題である限り、ダンボール村を個人の感傷的な思い出にしたくはありません」と書いている。
迫川の文章は店が発行している「BERG通信」に載っているのだけど、この充実したミニコミ紙を読むのも、店へ行く楽しみのひとつ。
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