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August 18, 2005

『アルフィー』のロリンズとミック

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銀座シネパトスへ行ったら、30人足らずの観客のうち男は3人だけだった。女性客はすべてジュード・ロウを見に来ているのだろうけど、僕が『アルフィー』に興味を持ったのは、主題歌がミック・ジャガーとデイブ・スチュワートの曲で、しかもゴールデン・グローブ賞だかの最優秀主題歌賞を受賞したと聞いたから。

というのも、『アルフィー』は1965年のイギリス映画『アルフィー』のリメイクで、旧作ではソニー・ロリンズが曲を提供していた。ロリンズの『アルフィー』(写真左)は20代の一時期、毎日のように聴いた愛聴盤だったのだ。で、ロリンズとミック・ジャガーの曲を聴きくらべてみたいと思ったわけ。

もっとも僕は1965年版の映画を見てない。おまけに、映画ではロリンズではなくイギリスのジャズ・ミュージシャンの演奏が使われたという。監督は007を何本もつくった職人ルイス・ギルバート。この作品でカンヌ映画祭審査員特別賞を受けているから、けっこう面白い映画だったんだろう。主人公(旧作ではマイケル・ケイン)の女遍歴とその裏側の空虚を60年代ポップ感覚で描いた作品だと想像する。

ちょいと洒落た映画にジャズを使うのは、50年代後半の『死刑台のエレベーター』(マイルス・デヴィス)、『大運河』(MJQ)以来、ヨーロッパ映画の流行りだった。この映画もその流れのなかにあり、「最後の大物」ロリンズに白羽の矢が立ったのかも。

ロリンズの「アルフィーのテーマ」は一度聴いたら忘れられないカッコイイ(60年代の言い回し)メロディ・ラインを持ってる。たらりら・らーらら・たらりららーらら、と今でもときどき口ずさむ。いかにもロリンズらしい明るく豪快な名曲。コンサートでも必ず演奏され、ロリンズが最初のフレーズを吹いただけで客は総立ち状態になる。60年代の演奏らしく、アドリブでコルトレーンの影が感じられるのも面白い。映画ではロリンズの演奏でなくとも、すごく効果的なはず。

ロリンズ盤『アルフィー』の2曲目「ヒーズ・ヤンガー・ザン・ユー・アー(He's Younger Than You Are)」は、スローバラード。この曲名は、裕福なビジネス・ウーマン役のスーザン・サランドン(新作)が自宅に若い男を引っぱり込み、それと知らずに訪れたジュード・ロウが「あいつのどこがいいんだ」みたいなことを言ったのに答えたセリフ。たぶん旧作でも同じシーンで使われたんだろう。ジュード・ロウみたいなセクシーな男でなく、もっとシニカルなケインが、このセリフにぶちのめされる(多分)のを想像するだけでおかしい。

今回の新作がミック・ジャガーを起用したのはなぜなのかな? よく分からないけど、ジャズではあまりに旧作に寄りすぎるし、今、ジャズを使う映画はノワール系やハードボイルド系に多く、今日的な感覚ではこの映画にジャズはそぐわない。かといって、この映画が旧作がつくられた60年代の空気を意識している以上、あまり新しいところでもおかしい。60年代を生きた大物(しかもイギリス系)となれば、ミック・ジャガーかエリック・クラプトン、てなことになったのかも。

新作のテーマ曲、ミック・ジャガーとデイブ・スチュワートの「オールド・ハビッツ・ダイ・ハード」は、サビのメロディーがなんとも印象的。甘い声のかすれ具合なんか、スティングのラブソングを思い出した。もっともストーンズのときのような攻撃的な鋭さはない。

映画は、ジュード・ロウのファッションやスクーターなんかの小道具、街路の看板に「DESIRE」とかメッセージを入れる手法、TOMATOによるタイトルバックまで、かなり意識的に60年代のテイストを追いかけてる。ミック・ジャガーとデイブ・スチュワートの曲が、意識的に今の時代とずれた匂いのあるこの映画にはよく似合う。

その一方で、ブルックリン橋越しのマンハッタンの夜景とか、グリニッジビレッジとか、NY名所を登場させるサービス精神は2時間ドラマ「京都なんとか殺人事件」と変わらない。60年代にこだわるかと思うと商売っ気がのぞく、その中途半端さが変におかしい。ジュード・ロウを見ているかぎり、そんなことどうでもいいんだろうけど。1965年版を探さなくちゃ。

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Comments

TBありがとうございます。
僕もロリンズ版の「アルフィー」はあの分厚いホーン・アンサンブルと
メロディがよくて何回も聴いたんです。

今回の映画に関しては(前作を観ていないせいもありますが)素直に
「今の映画」としてみてしまい、こういった視点は新鮮でした。
ミック・ジャガーとデイブ・スチュワートのコンビもよかったですし、
彼らとタイマンはったジョス・ストーンの曲もなかなかよかったですね。よかったらまたよろしくお願いします。

Posted by: Black Pepper | August 21, 2005 at 10:54 PM

>Black Pepperさま

改めて聴いてみると、ホーン・セクションはJ.J.ジョンソンにフィル・ウッズ、他にもケニー・バレルにロジャー・ケラウェイと豪華メンバーですね。オリヴァー・ネルソンのアレンジも素敵です。

Posted by: | August 23, 2005 at 10:25 PM

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