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May 08, 2005

アクセスの嵐、来たりて去る

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「アクセス解析」の数字を見て、あれ、表示が間違えてるぞ、と思った。何しろ1時間ごとのアクセス数が1万件を超えている。僕のブログは趣味のかたよった本や映画や音楽のことを書いていて、しかも更新頻度は週にせいぜい2、3回だから、訪れる人は日に100人から200人。その数でさえ、マイナーな話題にもかかわらずこれだけの人が読んでくれるのかと、ありがたく思っていた。

でも間違いではなく、この日(5月6日)のアクセス数は70,659件。ブログを始めて10カ月、これまでの累計が30,000件を超したばかりだから、1日でその倍以上の人が訪問してくれたことになる。ありがたい、というより、怖ろしくなった。

あれだな、と、すぐに分かった。友人のマンガ家、雑賀陽平が尼崎のJR脱線事故で亡くなり、4月26日に追悼の短文を書いた。検索エンジンやTBをたどって、アクセスが日に200~500件ほどあったから、それに違いない。にしても、ケタが違う。

「リンク元」を調べると、9割近くが「Yahoo!ニュース」から来ている。見ると、「エンターテインメントトピックス」のヘッドラインに雑賀陽平の死が取り上げられ、このサイトへのリンクが張られていた。

翌日(7日)にも3万を超えるアクセスがあり、2日間で10万を超えた。今日(8日)はヘッドラインが別の話題に変わって落ち着いたが、その数と集中のすさまじさは、いきなり竜巻が来て、あっという間に去っていった感じ。

今までブログは「1対多」の、どちらかというとミニコミ的なコミュニケーションの空間と思い、自分でもそのように書いていたけれど、この数はミニコミというよりマスコミに近い。自分の経験からいえば、単行本や月刊誌の仕事ではなく、週刊誌の仕事をしていたときの感覚。

真っ先に思ったのは、自分の記事に間違いはないだろうか、ということ。これは編集者としての性だろうか。仕事をするときには事実確認なしに原稿は書けないが、ブログはそこまで厳密には考えず、記憶で書くことも多い(事実確認には時間もかかる)。実際、このエントリでも雑賀陽平が『COM』の新人賞を受けたと書いて、後にそれが「入選」だったと分かり、追記で訂正していた。

もしこの間違いに気づいていなかったら、雑賀陽平の若き日の受賞歴が誤って広がっていたかもしれない。それ自体は小さなことだろう。が、ブログの「ニュース」(にしては遅い)によって、このようなことが日々、誰かのブログで起きているかぎり、同じようなことが、より重大な問題で起きる可能性は常にある。あるいは、この過程に誰かの悪意がまぎれこんだら、その結果は一層深刻になるだろう。

もうひとつ気がついたのは、10万を超えるアクセスがありながら、コメントとTBが1件もなかったこと(2件のTBは、それ以前のもの)。

ふだん、1日に100~200程度のアクセスがあって、週に数本から10本近いコメントやTBをいただく。僕のほうからも、できるだけコメントやTBを返す。そうしたつきあいによって、ネット上の知り合いもできている。今回のアクセスの嵐は、そうしたコミュニケーションとは別の一過性のものだった。

無論これは、どちらがいい悪いという問題ではない。同じネット空間の中に、いろんな位相のコミュニケーションが併存している。仲間だけで閉じたミニコミ空間もあれば、瞬時に世界中にニュースが伝わるマスコミ的空間もある。その中間に、いろんな位相の空間があって、普段はそれぞれが交わることは少ないけれど、同じ空間にあるのだから何かあれば色んな交差が生まれる。いわば同人誌と自費出版の単行本と週刊誌と新聞とテレビが同じ空間にあるということだろう。その面白さと怖さがネット空間なのかもしれない、などと考えた。

(追記)「ZAKZAK」というサイトに、雑賀陽平は「漫画専門誌『COM』の昭和46年10月号で『月例新人賞』を獲得、プロデビューした」とあるのを見つけた。「新人賞」か「入選」か、おそらく同じ事実を別の言葉で言っているだけなのだろうが、正確にはどちらなのか。ここは原点に戻って、『COM』昭和46年10月号に当たるしかない。が、その余裕がないので、とりあえず疑問のままにしておく。ネット上の情報の信頼性をどう捉えたらいいか(自分のブログも含めて)についても、いずれきちんと考えてみたい。(5月11日)

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Comments

はじめまして。こんにちわ。
私も6日付けのyahooトップページから
こちらのブログにたどりつきました。

私も雑賀さん(ここでは本名はさけておきます)とは、
私が生まれた頃からの知り合いです。
先日の事故の訃報を耳にしたときは
鈍器で頭を殴られたような衝撃を味わいました。

幼い頃雑賀さん一家が宝塚に引越してからは
おじさんにも会うことも少なくなり、
毎年母の元に届く年賀状を見るのが楽しみでした。
もう、あの年賀状を見ることができなくなったなんて
信じられません。

いま、わたしが家族の方たちにできることは何かを
日々考えていますが、いまだにわかりません。
お通夜やお葬式でも言葉がつまり何も話せませんでした。
わたしはどうすればいいのでしょう・・・。

Posted by: melrock | May 09, 2005 at 05:23 PM

>melrockさま

お察しします。私の年齢になると何人もの知人・友人を送っています。病気ならばなにがしか心の準備をする時間もありますが、事故で友人を失った経験はなく、私も彼の死をどう受け入れたらいいのか、いまだに分かりません。

私にできることは、雑賀陽平の仕事と名前をできるだけ多くの人に記憶してもらうことだと思っています。30年前に雑誌の仕事で描いてもらったイラストと毎年の年賀状が、探せば出てくるはずです。それを、いずれこのブログで公開したいと考えています。

Posted by: | May 09, 2005 at 07:30 PM

こんにちは。
「バッド・エデュケーション」のTBありがとうございました。
フィルム・ノワールの映画監督らしい発想の小道具を雄さまのブログを読ませていただき初めて気づきました。
映画のブログは、ただ素直な感想を綴った文章から、鋭い洞察まで幅広いです。経済・政治では、豊富な知識に圧倒されるブログも多いですが、映画は意外と読み応えのある文書は少ないです。雄さまの文章から興味をもちバックナンバーにも入りましたが、なるほど編集者でいらっしゃたのですね、納得です。
雑賀陽平さんのお話しとはそれてしまいましたが、盗作が堂々と?公式HPで掲載されていたという事件もあり、ネット空間、アクセス数は少なく自分は素人とはいえ書いたものに対する責任、そんなことを改めて考えました。
今後とも映画のカテゴリーも増やしてください。
ちなみに、リンク先の奥武則さんの「むかし都立高校があった」を読んでおります。共感しました。

Posted by: 樹衣子 | May 14, 2005 at 12:11 AM

>樹衣子さま

TB&コメントありがとうございます。

樹衣子さんのサイトも映画だけでなく時事的なものまで、読みでのあるブログですね。更新の多さにも圧倒されます。

奥氏とは大学の同級生で、彼は最優秀、私は劣等生でした。彼は他にも『白蓮教衰亡史』とか、とても面白い本を書いています。

Posted by: | May 15, 2005 at 11:38 PM

『夏目房之介の「で?」』には、下記のような記述がある。

「COM」を紐解いてみますと雑賀陽平さんの初投稿は
71年7月号の「ぐら・こん」で「我らの時代 ~われらは
如何にして生きるか~」が準入選。

10月号で「われらの時代~失われない世界~」で第20
回月例新人入選。

http://www.ringolab.com/note/natsume2/archives/003375.html

確かに、ネット上の情報の信頼性というのは、大きな課題
ですね。雑賀陽平さんについても、いっとき「西岸良平と同一人物か?」
という情報が流れて、「え~!!」と思った記憶がある。

Posted by: 健 | May 21, 2005 at 09:49 AM

夏目さんは雑賀さんと一緒に仕事をしていたことがあるし、「ひもといてみた」とあるなら間違いないでしょう。でもここまで来ると、どんな小さなことでも自分で確かめないと断定できなくなりますね。

ネットの情報は信頼性に欠けるけど、一方、マスコミのようにフィルタリングやエディティングしないアナーキーが魅力でもあるので、そこをどう考えるか、むずかしいところでしょう。

Posted by: | May 22, 2005 at 12:34 AM

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