エロティックな光の建築
ある建築評論家がこの建物のことを「クールな触感の光の塔」「見事な光のオブジェ」と書いていた。妹島和世と西沢立衛という2人の建築家の手になる「ディオール表参道」。昼間は何の気なしに通り過ぎてしまう建物だけれど、夜になると、その存在は他を圧している。といっても威圧的なのではなく、なんともエロティック。僕はこのブランドと無縁だし、中に入ったことはないけれど、夜、この建物の前を通るとしばし見とれてしまう。
小説はペン1本(古いね。今ではパソコン)があれば書けるけど、建築はスポンサーがなければ成り立たない。かつては空想建築家もいたけれど、それはあくまで例外。現代の建築の最大のスポンサーは国家と企業だろう。建築家にとって、その最も不幸な組み合わせがシュペーアとヒトラーだったとすると、ファッション企業との組み合わせは最も幸福な例なのかも。近くにあるプラダのビルもそうだが、「差異化」が商品価値であるブランドにとって、その「差異」を目に見えるかたちで示してくれる建築はユニークであればあるほどいい。いま、東京はブランド・ショップが次々にオープンしており、僕はそういう店に行くことはほとんどないけど、どうせならこんな実験をたくさんやってほしい。
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