森山大道とアラーキーの新宿
「森山 新宿 荒木」展(3月21日まで、初台・東京オペラシティアートギャラリー)が始まった。森山大道と荒木経惟。1960年代以来この国の写真表現のトップランナーとして疾走をつづけ、国際的評価も高い2人が撮った新宿を集大成した写真展。
2人の写真を30年以上にわたって見ているので、作品について語りはじめたらキリがなくなる。気づいたことだけ簡単にメモしておく。
森山にとっての新宿は、処女作『にっぽん劇場写真帖』(1968)以来のホームタウンのようなもの。60年代の牧歌的な歌舞伎町やゴールデン街裏の都電の線路なんぞが懐かしい。荒木も70年代から新宿を撮っているけど、本格的に新宿を主題にしたのは80年代に入ってからからと(「東京ラッキーホール」)、意外に新しい。インターナショナルな風俗街に変わった歌舞伎町や建設がはじまった都庁庁舎など、ああ、今の新宿は80年代から始まったんだなと感慨。
レトロばかりではない。去年の8月、森山と荒木が一緒に新宿を撮った新作が、入口を入ってすぐの大きなスペースに展示されている。森山はデジタル出力(カラー出力のモノクロ)の大判が2面の壁いっぱいに12点、荒木はカラープリントが66点というガチンコ対決。2人とも、パワー、スピードともに拮抗して見応えあり。
過去から今日までの2人の新宿を見て、その視線がそれぞれ見事に一貫していること、2人の視線の質がなんとも対照的なのが面白かった。森山はいわば透明人間のように街に紛れこみ、自身の肉体と街とが擦過する一瞬の触感をひたすらに追いかける。荒木は「アラーキー」というキャラとして街に立ち、街と会話を交わしながら、表層のきらめきといとおしさを掬いあげようとする。
2人が新作を撮影する様子が写真とヴィデオで撮られているのが嬉しい。新宿の街で2人のなんと生き生きしていることか。ちなみに森山のカメラはリコーGR21とミノルタα-8700、荒木は中判のプラウベルマキナ67だった。
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