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December 17, 2004

永遠の不良少年 ラリー・クラーク

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作品もすごいけど、作品をつくりだした作者がそれ以上に時代の縁を綱渡りして生きているようなとき、安全地帯にいて作品についてあれこれ言うのはなんだか上っ面を撫でているような無力感に襲われる。小説でいえばチャールズ・ブコウスキーがそうだし、写真家のラリー・クラークも同様だ。

チェロキー・インディアンの血、10代でのドラッグ中毒、拳銃不法所持、服役、12年に及ぶ沈黙、再度のヘロイン中毒、絶えざる喧嘩と中傷、37歳年下の恋人。彼が発表した6冊の写真集と5本の映画よりもラリー・クラークの存在そのもののほうが、この50年間のアメリカ社会のエッジを露わにしてみせているように思える。そんな彼の展覧会「パンク・ピカソ」が青山のワタリウム美術館で開かれている(05年1月30日まで)。

展示されているのは「作品」ばかりではない。家族の写真(純血のチェロキー族だった祖母の盛装が美しい)、お気に入りのレコード・コレクション(ビリー・ホリディ『レディ・シングズ・ザ・ブルース』やコルトレーンの『バラード』)、自身の裁判や自作に出演した少年の自殺記事など新聞のスクラップ、リバー・フェニックスの雑誌グラビアの切り抜き、映画の小道具や出演したティーンエイジャーたちのポラロイド、中年をすぎて熱中したスケートボード、走り書きのメモやファクスにいたるまで248点。

それらが、「作品」以上に存在感をもつラリー・クラークの生きてきた軌跡を僕らに語りかけてくれる。なかでも、ラリーが自分の映画に起用したかったリバー・フェニックスの大量の切り抜きが興味をそそる。

リバーが23歳でLAの路上で死んだ後、ラリーはこれらの切り抜きを集めて本をつくったという。リバーはラリーと同じくドラッグ中毒だったらしいけど、常にティーンエイジャーを素材にしてきたラリーの写真や映画にとって、リバー・フェニックスは失われたアイドルとして見果てぬ夢のような存在だったのだろうか。

『キッズ』などの映画(未見)については資料が展示されているだけだが、写真家としての作品は展示されている。1960年代のアメリカの田舎町で、麻薬と暴力とセックスの青春を自分も仲間のひとりとして記録した『タルサ』(1971)。その後、拳銃不法所持と服役をはさんだ十数年の、やはりドラッグとセックスの日々のドキュメントである『ティーンエイジ・ラスト』(1983)。

当時、性器やセックス・シーンが写っている写真はスキャンダルとなり、いくつかの州で販売禁止になった。それらも含めて、この2冊の写真集でラリーに写しとめられたティーンエイジャーたちは数十年の歳月を経てなおみずみずしい。

車のシートでペニスを立てている少年も、そのペニスをにぎっている少女も、スキャンダラスどころか、今となっては静かな、とでも呼べそうな光を受けて青春の一瞬の輝きを放っている。展示されている点数は少ないけれど、写真集とは別カット(僕が持っているのは2冊ともTaka Ishii Gallery発行の日本版)が選ばれているのも嬉しい。

90年代に入って、ラリーの仕事の重心は写真よりも映画に移ったようだが、ニューヨークのストリート・キッズを撮ったその時代の作品と併せ見ても、少なくとも写真に関する限り、ラリー・クラークは自らのスタイルや手法にはほとんど関心を示していないように見える。

まず生きることが先決であり、ティーンエイジャーたちと交わることこそが大切で、彼らをどう撮るかについては、ただ好きなように撮っているだけというふうに思える。アートとしての完成度を高めたり、方法を意識化しようとはしていない。それが彼のいさぎよさであり、だからこそ写真や映画作品以上にラリー・クラークの生き方そのものが「作品」になっているのだと感じられる。

60歳を過ぎた最近の作品--9・11に貿易センターが崩壊する瞬間をマンハッタンの自宅から撮った写真、37歳年下の恋人のヌード、ストリート・キッズたち--も展示されている。ラリー・クラークは筋金入りの、永遠の不良少年だ。

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