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December 01, 2004

続『灰とダイヤモンド』の謎

スタンダード・サイズだとばかり思っていたポーランド映画の名作『灰とダイヤモンド』が、実はヴィスタ・サイズだったのかもしれないという疑問を先日書いた(11月6日「『灰とダイヤモンド』の謎」)。その後の話。

なにはともあれ、インターネットでいくつかの映画データベースを当たってみた。でも、どのデータベースも公開時の画面サイズまでは書いてない。そこで早稲田大学図書館へ行く用事ができたついでに、『キネマ旬報』のバックナンバーを調べてみることにした(関係ないけど、全館開架式になったこの新しい図書館の使い勝手は素晴らしい)。

そしたら、なんと「製作58年 黒白ビスタビジョンサイズ」とあるではないか(1959年9月1日号、岩淵正嘉「戦後ポーランド映画10選」)。

『灰とダイヤモンド』はヴィスタビジョン・サイズだった! じゃあ僕が繰り返し見たスタンダード・サイズの『灰とダイヤモンド』は何だったんだ? 「フレームの隅々まで計算された構図」なんて書いた(実際、長いことそう思っていた)のは、実はヴィスタサイズの左右を適当にちょんぎった画面についてそう言っていたわけなのか。そう思うと、がっかりしてしまった。

そもそもヴィスタビジョンとは何なのか? 「映画はこうなっている」というHPの「ワイドスクリーンの研究」によると、こういうことらしい。1950年代、テレビの普及で観客減に見舞われたアメリカ映画界はスクリーンのワイド化でこれに対抗し、シネラマやシネマスコープが生みだされた。パラマウントが開発したヴィスタビジョンも、そうしたワイド・スクリーンのひとつだった。

ヴィスタ・ビジョンはシネラマやシネスコに比べ画質は飛び抜けて良かったのだが、横長の比率が低かったために(シネラマの縦横比率1:2.88、シネスコ1:2.37に対し、ヴィスタは1:1.85)ワイド化競争に負けてしまう。なぜ1:1.85の縦横比率かというと、これが人間の視野にいちばん近い自然なサイズという理由。ビデオ戦争のベータもそうだが、良心的技術が得てして敗北するというのは歴史の教訓か。

その後、現在までつづくヴィスタサイズは、専用レンズを使って撮影するパラマウント開発のヴィスタビジョンではなく、スタンダードサイズで撮影したものの上下をちょんぎって1:1.85にしたもの。

では、僕が見たスタンダード・サイズの『灰とダイヤモンド』は何だったのか? 想像するに、ヴィスタビジョンがワイド化競争に負けた結果、世界的にヴィスタを上映する映画館が減ってしまった。そこでやむなく、本来のヴィスタ・サイズの左右をちょんぎってスタンダード・サイズでプリントし直したものを流通させることにした。多分、そういうことなのだろう。

となると、次の疑問が湧く。僕たちがスタンダード・サイズだと思っているこの時代の映画で、実はヴィスタサイズのものがあるのではないか。『灰とダイヤモンド』を製作したポーランドの国立製作会社カードルでも、ヴィスタのレンズを購入した以上、他にもヴィスタで撮った名作があるのではないか。

そんなことを考えながら気を取りなおして、冒頭を見ただけで止めてしまったヴィスタ・サイズの『灰とダイヤモンド』を改めて見てみることにした。結果、スタンダード・サイズで気になったようには、画面の美学的構成に意識が行かず、その分、内容にすっと入っていけるような気がした(本来はヴィスタだったと分かったとたんに、現金なもんだ)。でも久しぶりにマチェックに会って、ラストの悶えるように息絶えるシーンには、やっぱりシンとなってしまったのだった。

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