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December 26, 2004

『ランティエ。』は和風味

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創刊された『ランティエ。』(角川春樹事務所)のコンセプトは「和」らしい。『LEON』『GQ』『日経大人のOFF』『一個人』などがひしめく「大人の男性誌」市場へ割り込むために、隙間を探したらそこへ行き着いたということか。

表紙が桜、扉は注連縄(しめなわ)に朝陽、目次には鳥居や石灯籠の写真とともに「魂(にっぽん)の風物詩」「日本人論」の文字が踊る。ただ、誌名が横文字だったり(ご丁寧に「。」つき)、外国人の写真家をメーンに起用していることからも察せられるように純粋の「和」ではない。いわばヨーロッパのブランド・スーツに身を固めた男の「和」礼賛。

「総合プロデューサー」角川春樹は「退屈でない人生を求める男たちへ高等遊民(ランティエ--19世紀末パリの隠居的生活者)という新たな価値を提案するとともに、精神の無頼性、何ものにも束縛されない自由な遊び心で一生不良であり続けたい読者へメッセージを発信します」と宣言している。

つまり、金と心にゆとりのある中年男よ、日本の伝統を再発見して人生楽しもうぜ、ってことらしい。各地のお供えの写真を構成した「魂の風物詩」を巻頭に、凧や絵馬など正月習俗を写真とテキストで見せる「日本の習俗を言祝(ことほ)ぐ」、若狭三寺の千手観音を紹介した「古佛礼拝」、江戸以来の名店を紹介する「老舗総覧百五十軒 江戸~東京編」など、「和」テイストの記事が並ぶ。

写真は「古佛礼拝」など見応えがある。デザインもヴィジュアルの処理、テキストの組み、ともに悪くない。でも何かが欠けている。写真はいいけれど、ただ並んでいるだけ。テキストは味も素っ気もなく、「無頼」とか「遊び」というわりには教科書風。

そこで欠けているのは編集者の仕事だと思った。料理でいえば包丁さばきや出汁や味付けに当たる仕掛けが希薄なので、記事にコクがない。それなりの素材を、素材のままに見栄えのする盛りつけで並べただけ、という感じがしてしまう。 同じことはアンケート調査「いま『素敵な女性』『美人』『いい女』は誰だ?」にも言える。

推測するに、編集長、デスククラスに雑誌経験者を配しても、現場には経験者が少ない、あるいは外部の編集プロダクションにまかせたということかも。雑誌に大切なのは、その雑誌にしかない匂いだと僕は思っているが、読者と共有できるそんな匂いを醸しだすのが、実はいちばん難しい。創刊号にそれを求めるのは、ないものねだりかもしれないが、店構えも値段も素材も一流店の顔をしてるのに、味に決め手がない店のようだ。

ほかに気がついたことがいくつか。女性誌とちがって男性誌が「和」というと、すぐに「にっぽん」とか「日本人」とか『SAPIO』風ナショナリズムになびいてしまいがち。創刊号の「日本人論」では天下国家については避けているけれども、そこに一定の読者層がいることは確かなので、苦しくなったときに「硬派」に行く危険はあるかも。

「和」を標榜してるのにファッション・ページだけはモデルが西洋人なのが、なんとも奇妙だ。別の雑誌に紛れこんだみたいな違和感がある。若い世代向けの男性誌では日本人モデルはたくさんいるのに、50代以上ではまだ「こうなりたい」と読者に思わせるモデルがいないのか(せいぜいPAPAS止まり?)。競合誌『LEON』のモデルもみな西洋人なのを評して斎藤美奈子が言ったように、「日本のオヤジはまだ黎明期なのである」(『男性誌探訪』)。

福田和也「怪物列伝」(第1回は北大路魯山人)、荒俣宏「朱引のうちそと 江戸東京境界めぐり」の連載は読ませるけれど、コラムが物足りない。福田恒存、森茉莉の過去の名作コラムを載せていて、それは「名作」には違いないが、コラムにはやはり同時代の風が吹いてないとね。先ほど言った雑誌のコクや匂いを出す上でコラムの果たす役割は重要なのだ。

創刊号にしては広告がやや寂しいのも気がかり。この定価(680円)では、部数と広告がある程度の数字を出さないと苦しいだろう。次号を買う気は起こらないけど、1年後にどうなっているか、もういちど見てみることにしよう。


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Comments

TBさせていただきました。

>創刊号の「日本人論」では天下国家については
>避けているけれども、そこに一定の読者層が
>いることは確かなので、苦しくなったときに
>「硬派」に行く危険はあるかも

同感です。私はこの「日本人論」に目が
止まって買ったので、行方が気になるところ
です。

それと、他にひっかかったのが、1972年の
「さらば青春」史。『喝采』派と『傘がない』
派にくくっています。

でも、当時のフォークのムーブメントを
考えれば、いくらエポック・メイキング的
作品でも、『傘がない』でフォークを
ひとくくりにするのはいかがな
ものでしょうか。

また、「和」をうたうなら、なぜ西洋占星術?
他の占いだってあるでしょう、と思わず
突っ込んでしまいました。

Posted by: つきのみどり | January 16, 2005 at 12:14 AM

>つきのみどりさま

コメント&TBありがとうございました。

「喝采」派というのは演歌ってことでしょうか。「その時、青春だったあなた」(特集の見出しより)は「喝采」は歌ってなかったと思うけど。かといって「傘がない」に興味はなく、しいていえば私は「赤色エレジー」派だったでしょうか。

Posted by: | January 18, 2005 at 12:09 AM

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