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October 23, 2004

嶋津健一の宙(そら)の音

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嶋津健一の「AIR 空間が紡ぎ出す即興演奏の広がり」(10月22日、四谷・コア石響)に行った。嶋津はもともとジャズ・ピアニストだけれど、今日はジャズクラブではなく小ホールでのコンサート。「空」と書かれた3枚の書をバックに、いわゆるジャズとは少し違った、あまり聴いたことのない音の世界に浸った。

第1部は山下弘治(bass)、加藤真一(bass)という2台のベースとのセッション。このダブル・ベース・トリオについては以前にブログに書いたことがある(8月18日「嶋津健一の冒険」)。ユニークな編成と音。今夜は3人とも気合いが入ってる。なかでも嶋津のオリジナル「Harapeko」はマイナー・ブルースの、ジョン・ルイスの「Jjango」はバラードの、体の芯がとろけるようなピアノに聴きほれた。この2曲はまぎれもなくジャズの興奮。

一方、やはり嶋津のオリジナル「宙(そら)の音」や、デューク・エリントンの「African Flower」は、ジャズの即興演奏という方法を使いながらも、聞き手が刺激されるエモーションの質がいわゆるジャズから受けるものとは少しずれている(別にジャズであってもなくてもいいのだけれど)。ジャズのリズムやグルーブ感とは別の音の配列から、これはもう嶋津のオリジナルと言うしかない美しい音の世界が紡ぎだされる(音を言葉にホンヤクするのはむずかしい)。

第2部に入ると、それはもっとはっきりしてくる。田辺洌山(尺八)、かなさし庸子(voice)、加藤真一(bass)とのユニット。尺八という日本の楽器が入り、日本の曲も演奏されるのだけれど、ジャズが日本的な要素を取り入れようとするときによく陥る逆オリエンタリズム風のジャズにはならない。

「鹿の遠音~Blue In Green」は、まず尺八とヴォイス(歌というより声なのです)の応答で尺八の古典(だそうだ)が演奏された後、ピアノとベースがマイルス・デイビスの曲へと移行してゆく。…と、これはプログラムを見ているから分かるので、知らずに聴いていたらひとつの曲としか聞こえないだろう。それほど自然に尺八の曲とマイルスが融合して、どこか遠い世界から人間に呼びかけてくる音のような不思議な空間が現れてきた。

「さくら」と、アンコールの「りんご追分」はサービス精神いっぱいの演奏。ゆったりと揺れるようなリズムに、気がついたら体が動いていた。

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