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September 17, 2004

『VS.』vs.『Number』

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月刊『VS.(バーサス)』(光文社)の創刊号が出た。スポーツ雑誌というと、どうしても『Number』と比べてみたくなる。僕の感想を一言で言えば、似て非なる雑誌。スポーツを素材にした「男の生き方雑誌」という印象だ。

巻頭特集は大リーグの日本人プレイヤーを中心にした「頑固と言われようと、自分のスタイルを貫く男たち」。創刊号巻頭のタイトルに、雑誌が目指すものが込められている。松井(秀)、野茂、長谷川、高津にインタビューした長いエッセーと写真。オーソドックスな切り口と文章で、それぞれの「流儀」を浮き上がらせようとする。

『Number』最新号も、珍しく野球特集。こちらは日本プロ野球の1リーグ制問題を中心に、「野球は誰のものなのか」「江夏豊インタビュー」「藤井寺物語」「猛牛たちの伝説」など盛りだくさん。江夏の主張に、そう、そうなんだよなあと頷き、猛牛伝説に過去の栄光を偲ぶ、老舗らしいファン心理を心得た記事が並ぶ。『VS.』の特集が130キロ台のストレートなのに対して、こちらはストレート変化球と多彩な球種を駆使。

『VS.』の第2特集はアテネ・オリンピック。バレーボールの吉原、レスリングの吉田ら女性アスリートを女性ライターがレポートしている。一方、隔週刊の『Number』ではオリンピックは既に過去の話題で、コラムでしか扱われていない。月刊誌である『VS.』がオリンピックやワールドカップを取りあげようとすれば、その問題は常についてまわる。時間的不利をカバーする誌面がつくれるかどうかの勝負だけれど、この特集はちとぬるい。

コラムは、率直に言って『Number』の切れ味に遠く及ばない。特集にしてもコラムにしても、スポーツ愛好者の心情や批評心のツボをどう刺激するか、『Number』が培ってきたノウハウに改めて感心する。その代わり、『VS.』はスポーツをからめたファッションや道具(モノ)や食で「男のライフスタイル」誌を志向する。

単発では、悲運の競歩ランナー・板倉美紀の闘いを追った織田淳太郎「遥かなる五輪ロード」が、なじみの薄いスポーツを素材に読ませた。連載に金子達仁、東野圭吾、吉田修一と小説を3本揃えているのも、最近の創刊誌では異色。

本文に『Number』と同じく11級の小さめな文字を使い、しかも余白や行間を広く取っているのに、『Number』より読みにくく感ずるのはなぜだろう。選んだ明朝の書体が肉薄なこと、字詰めが多いこと(35字詰めの2段組みもある)、墨(黒)以外のインクも使っていること、写真のなかに文字を抜いていること、などによるものか。

総じて、光文社の雑誌には珍しく可読性よりデザインを重視しているように見える。老眼が来ている身には、電車で30分読んだら目が痛くなってきた(そんな世代は相手にしてないよと言われれば、その通り)。

広告はスポーツ関係だけでなく、ブランド、車、化粧品から痩身法、アデランスまで雑多。創刊号にはおつきあいするクライアントも多いから、今後どのような広告が増える(減る)かも雑誌の方向性と関係するだろう。

「似て非なる」雑誌だから同じフィールドでは論じられないけれど、どっちを選ぶかと聞かれれば、やっぱり『Number』を買うだろうなあ。

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