『芸術新潮』の円空特集
『芸術新潮』9月号が円空の特集をしている。
『芸新』の特集は題材も編集もオーソドックスだけれど丁寧なつくりで、いつも安心して読める。今月号もその例に漏れない。
数十ページにわたる撮り下ろしの円空仏、梅原猛の長編エッセー、全国の円空仏マップ。必要にして十分な素材だけで65ページ。ムック(あるいは新潮社の「とんぼの本」)1冊分の内容はありそうな「保存版」だ。
梅原のエッセーは、彫刻家としての円空だけでなく、行基ー泰澄の流れで円空の仏教思想を重視しているのが面白い。円空を木地師とみる通説に異を唱えているのも彼らしい。
ほかに、平野甲賀の手書きタイポグラフィーを扱った小特集。平野はひらがな、片仮名、数字、アルファベットの4種で自作のフォントをつくってしまった。そのフォントで組まれた見開きページを(実用はともかく)ついつい読んでしまう。今後、常用漢字を中心に2000字の自作漢字フォントに挑戦するらしい。この特集では漢字は既成のゴチック系フォントが使われているが、全部自作のフォントになったら「読むことを拒否する本」ができるかも。
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