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August 13, 2004

『ドリーマーズ』の細部

細部がこんなに魅力的なのに、どうして映画全体として心に響いてこないんだろう。それが、ベルナルド・ベルトルッチの『ドリーマーズ』を見ての感想だ。

1968年のパリ。「5月革命」のさなかに出会ったアメリカ人留学生と双子の姉弟との、ねじれた「愛」のゲーム。

出会ったばかりの留学生のマチューが、姉のイザベルに聞く。「生まれはパリ?」。イザベルが答える。「1959年、シャンゼリゼ。産声は『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』」。

映画好きなら、ぴんとくる。これはゴダール『勝手にしやがれ』の、ジーン・セバーグの透明な声のせりふ。次の瞬間、ゴダールのモノクロ画面が引用され、カラーに戻ると、今度はイザベルがジーン・セバーグと同じ格好でシャンゼリゼを歩いている。

引用はさらにつづく。両親が旅行中のアパルトマンで3人が同棲(?)をはじめ、イザベルがマチューを挑発して、ルーブル美術館を3人で手を組み端から端までを駆け抜ける。ゴダール『はなればなれに』の印象的なシーンそのまま。ゴダールの映像とベルトルッチの映像がモノクロとカラーでつながれる。

ゴダールだけではない。バスター・キートン、ハワード・ホークス、サミュエル・フラー、ロベール・ブレッソンらの映像が、同じように引用される。こういう引用は、言うまでもなくゴダールの手法だった。ベルトルッチはゴダールのシーンだけでなく、手法そのものを引用しながら、ゴダールと先行する監督たちにオマージュを捧げている。

シネマテークの前でジャン・ピエール・レオがしたアンドレ・マルロー文化相弾劾の有名なアジ演説を、レオ本人が演じているのも嬉しい。

引用は映画だけではない。ジャニス・ジョプリンが繰り返し流れる。タイトル・ロールの背後にはジミ・ヘンドリクス。ほかにもドアーズ、ボブ・ディラン、グレートフル・デッドときて、最後はやっぱりという感じでエディット・ピアフ。

3人が「愛」のゲームを繰り広げるアパルトマンの内装も、イザベルのファッションも、いかにも耽美派のベルトルッチ好み。だからこの映画、細部を見ているぶんには実に楽しい(特にベビーブーマー=団塊世代には)。

それがなぜ映画的感動につながらないのだろう。答えは出ないけれど、ベルトルッチと彼が師と仰ぐゴダールの資質の差かな、という気はする。

ゴダールは物語を解体し、外部からたくさんの映像や音や言葉をポリフォニックに取り込むその速度によって映画をつくってゆく。一方、ベルトルッチは僕の見るところ物語作家で、唯美的な映像を積み重ねながらじっくりと物語を編んでゆく(だからベルトルッチはゴダールでなくヴィスコンティの後継者だと僕は思う)。そんな資質のベルトルッチがゴダールふうな拡散とスピードで映画をつくろうとしたことが、この映画に齟齬をもたらしているのではないかな。

ラストシーン。「ドリーマーズ」となってアパルトマンに閉じこもった姉弟の耳に、窓の外から街路のデモの音が聞こえてくる。マチューにうながされて2人は外に出る。ドアを開ける瞬間、僕は鈴木清順みたいな映像の飛躍を期待したんだけど(真っ赤な雪、とまでは言わないが)、デモの波と赤旗が映し出されただけだった。まあ、ベルトルッチは赤旗好きだから仕方ないか。リアリズムの「正しい」映像だけど、ちょっとがっかりした。

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Comments

こんにちは☆コメントありがとうございました。
「左岸なかんじ」とかいいかげんな表現ばっかりですいません…。感覚で生きる人間なもので語彙も相当いいかげんです。

濃いブログですね。映画評など読みながら「ほうなるほど」と思うこと多々です。『21g』『子猫をお願い』もトラバさせていただきます。

Posted by: manamizw | August 31, 2004 at 11:07 PM

すいません!サーバーの調子がよくないようで
「TBできません」の表示が何度も出るのでリトライしてたら
こっちではちゃんとTBできてる?!
重複してしまって申し訳ありません。
お手数ですが削除していただけるとありがたいです。
ほんとうにごめんなさい!

Posted by: manamizw | August 31, 2004 at 11:16 PM

manamizw様
TBありがとう(重複は削除しました)。
半世紀近く(と自分で書いてびっくり!)映画をみつづけていることだけが取り柄です。

Posted by: | September 01, 2004 at 05:07 PM

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