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August 29, 2004

偏愛映画リスト 活劇編

活劇などと古めかしい言葉を使ったのは、他に適当なネーミングが思いつかなかったから。アクションと言ってしまっては、ちょっと違う。10代から20代にかけて、ロバート・アルドリッチ監督やドン・シーゲル監督の晩年の作品にぎりぎり間に合ったことが僕の映画体験に大きく影響していると、ずいぶん後になって気がついた。

●『007 危機一発』(1963)
007はやっぱりショーン・コネリーだ。中学時代から大学にかけて、『殺しの番号』から『ダイヤモンドは永遠に』まで全部見たけれど、『危機一発』が最高という意見に異論のある人はいないはず。ザグレブ(という地名をこの映画で覚えた)で夜行列車に乗り込んだロバート・ショウが、コンパートメントでコネリーと死闘を繰り広げ、列車から降りたコネリーをヘリが追跡して、これをライフルで撃墜するあたりまで、文字通り息をつかせない。今では誰も驚かないだろうけど、ヘリが爆発して木っ端みじんになるシーンに度肝を抜かれた。

ジェームズ・ボンドでしか知らなかったコネリーを、あれっと思ったのが『史上最大の作戦』。1シーンのみの出演だったけれど、下品な冗談を飛ばす髪の薄いアイルランド兵に扮しているのを見て、007のイメージが完全に崩れた。…と思ったら、あっという間に渋い名優になってしまったのはご存じの通り。007、最近では『ダイ・アナザーデイ』を見た。ハル・ベリーがセクシーだね。

●『飛べ! フェニックス』(1966)
石油会社の輸送機が不時着して、サハラ砂漠の真ん中に10人ほどが放り出される。並の監督なら、そのなかに美女を配するだろう。ロバート・アルドリッチはそんなことをしない。昔気質のアメリカ人機長と、人情家の助手。ごりごりの英国将校と、上官を見捨てても生き残ろうとする軍曹。冷静なドイツ人飛行機デザイナー。荒々しい採掘人夫。温厚な医師。男だけを配して男たちのドラマを物語る、アルドリッチの独壇場だ。

おいぼれ機長も、融通の利かない英国将校も、合理主義のドイツ人技術者も、型通りでありながら血が通っている。こわれた輸送機を分解し、小さな飛行機を組み立てて脱出しようというアイディアが面白く、それを指揮するドイツ人技術者が、実は本物ではなく模型飛行機のデザイナーだと分かった瞬間の機長の呆然とした顔が忘れられない。人間を描いてさりげなく深いこんなエンタテインメントが、この時代には何本もあった。

●ジャッキー・チェンの映画
そうと気づかずに、途方もない映画を見ていたものだ。子供が小さかった頃、『スパルタンX』(1984)、『プロジェクトA』(1984)、『ファースト・ミッション』(1985)、『ポリス・ストーリー 香港国際警察』(1985)、『サイクロンZ』(1988)なんかを見に行った。そのときは子供と一緒に喜ぶだけで、ジャッキー・チェンの凄さに思い至らなかった。それが分かるようになったのは、CGやワイヤ・アクションが全盛になってから。

カーチェイスでスラム街を突き抜け、崖のような急坂をころげ落ちる。建築現場で竹の資材をつたって、とんでもない高さからすべり降りる。ショッピングセンターで、大量のガラスを粉々にしながら戦う。生身の肉体のアクションこそ映画(ムーヴィー)の原点。ジャッキー・チェンは、ブルース・リーというよりキートンの流れを継ぐと考えるほうが、その位置がよく分かるのではないか。80年代の作品は完成度も高く、ジャッキーのアクションも充実しきっていると思う。

●『スペース・カウボーイ』(2000)
クリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナーという、3、40年前からおなじみの、還暦をとっくにすぎた4人のおいぼれを使った活劇という発想がいい。バカにされた年寄りが最後に若いもんを見返すのはハリウッドの定型のひとつだけれど、イーストウッドはその伝統をきっちり守りつつCGも使って「宇宙の西部劇」に仕立て上げた。

僕はこの映画を大晦日の最終回に、今はない渋谷の東急文化会館で見た。最後、イーストウッドがおいぼれの技を使ってスペース・シャトルを無事に地上に降り立たせた瞬間、館内から拍手が湧いた。年の瀬で皆センチメンタルな気分だったのかもしれないが、普通の映画館で拍手が起こるのを経験したのは何十年ぶりだろう。子供の頃のちゃんばら、東映やくざ映画以来のことで、とてもいい気分で映画館を出た。

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