懐かしい誤植
松山巌『建築は ほほえむ』(西田書店)を読んでいて、珍しい誤植をみつけた。20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエの言葉を引用して、「『住宅は住むための機械』だと語った」という部分の「語」の字が、90度横倒しになっていたんですね。僕は懐かしくて、ついにっこりしてしまった。
かつて、ほとんどの文字が活版で印刷されていた時代には、ある文字が横倒しになったり引っくり返ったりするのは、植字工が1文字1文字、活字を拾って組み込む作業のなかで生まれる、ごくありふれた誤植だった。
その後、活版は姿を消し、電算写植やDTPの時代になったが、いまのシステムでは、ある文字を90度横倒しにするのは、意図的にそうする以外にはまずありえない。だから、文字が横倒しになったり、逆さまになったりする誤植はほとんどなくなった。その代わり、知らないうちに別の文字や記号に化けている別種の誤植は増えたが。
ということは、この本はどうやら活版で組まれているらしい、のですね。大手の印刷会社はもとより、美しい活版活字で有名な印刷会社も何年か前に電算写植に転換したという話を聞いているから、どこかの町工場のような印刷所にわずかに残っている活版で印刷したのかもしれない。
そう思ってみればこの本は、本文の書体ばかりでなく、装幀、造本、紙など細部にわたって、色んな工夫が凝らされている。そのあたり、内容ともども、いずれbook-naviのサイト(LINKS参照)で書評してみようかな。
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Comments
雄様、こんにちは。
私は活版印刷というと、
銀河鉄道の夜のジョバンニを思い出します。
私も90度傾いた文字を想像してニンマリしてしまいました。
Posted by: りか | February 03, 2005 10:39 AM