April 10, 2019

『アウトサイダー』 J・レトの花田秀次郎

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The Outsider(viewing film)

 

1950年代大阪を舞台にした米国製ヤクザ映画。主演は『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー助演男優賞を得たジャレッド・レト、監督は『ヒトラーの忘れもの』が話題になったデンマーク出身のマーチン・サントフリートとくれば、どんな映画か見たくなるってもの。ネットフリックスが『アウトサイダー(The Outsider)』の世界独占配給権を買ったのも、その異色の組み合わせにあったかもしれない。

見ていて、過去のいろんな映画の断片や記憶が呼び起こされた。『ブレードランナー』『ブラック・レイン』『仁義なき戦い』『キル・ビル』『アウトレイジ』、そして『昭和残侠伝』などなど。

『ブレードランナー』はリドリー・スコットらしい美学的なオリエント趣味の映画という意味で。『ブラック・レイン』を経由して、『アウトサイダー』もその延長上にある。『ブラック・レイン』とこの映画は大阪が舞台ということで共通しているが、映像的にも影響を受けているんじゃないかな。『ブラック・レイン』は冒頭、機上からながめる阪神工業地帯の工場群と煙突の煙が印象的だったけど、この映画でも似たショットが繰り返し出てくる。

元米兵で日本で犯罪を犯し服役中のニック(ジャレッド・レト)は、囚人仲間に殺されそうになった清(浅野忠信)を助けたことから、大阪のヤクザ白松組組員である清の引きで客分となる。白松組は年老いた親分(田中泯)をオロチ(椎名桔平)が補佐しているが、大阪に進出してきた神戸のヤクザに押され、小競り合いがつづいている。ニックは白松組の先兵となり、親分の信頼を得て杯をもらう。

対立するヤクザ組織の抗争という設定は、言うまでもなく『仁義なき戦い』や『アウトレイジ』を下敷きにしてる。椎名桔平など、『アウトレイジ』からそのままこの映画に移ってきたみたい。設定だけでなく、指を詰めるシーンも共通。『仁義』では指を詰めるシーンにはコミカルな味があったが、こちらはまるで羊羹でも切るようにスッと指を切り落とす。

ニックは清の妹(忽那汐里)と愛し合うようになるが、オロチも妹に執心している。オロチは白松組を見限り、神戸の組織と手を結ぶ。親分が命を狙われ、清も命を落とす。ニックは、妹を守るためにと清から手渡された日本刀を手に、、、。

『仁義』や『アウトレイジ』は熱気あふれる映画だったが、この映画は登場人物も声高に叫ばず、全体に静かな印象がある。それはニックが口数少なく、無表情でいることと関係しているだろう。この主人公の人物造形のモデルは、僕の見るところ『昭和残侠伝』の高倉健ではないか。ジャレッド・レトは役になりきることで有名な役者だけど、でも文化的な基盤を僕らと共有しているわけではない。高倉健の無口と無表情に、僕らは憤怒や悔恨といったいろんな感情が満ちあふれているのを理解するけど、ジャレッド・レトからは無口と無表情以上のものを感じられない。

だから作り手の思いとしては高倉健の花田秀次郎でも、ジャレッド・レトのニックの生きざまにすっと一本筋が通っているように見る者に受け取れない。最後の殴り込みも、花田秀次郎はがんじがらめの日本的しがらみをぶった切ることで見る者にカタルシスを与えたが、ニックのそれはオロチの裏切りによって清が死んだことへの個人的怨恨を晴らすためのように見えてしまう。ラストでニックが妹と抱き合うのも、その印象を強くする。カタルシスは来ない。

いまひとつ残念だったのは、そういうものから切れた『ブラック・レイン』から30年もたつのに、観光客レベルのオリエンタル趣味(大衆演劇ふうの心中劇や相撲、刺青、日本刀──これは『昭和残侠伝』というより『キル・ビル』)が出てくること。逆に驚いたのは、1954年の大阪という設定を不自然に感じさせないロケをしていること。実際に大阪で撮影したようだけど、路面電車の走る市街などはどこだろう。夜、山の麓の市街を電車が光をあふれさせて走る、神戸らしきショットも印象的だ。

あれこれ言ったけど、ともあれ楽しめる映画ではありました。

 

 

 

 

 

 

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April 05, 2019

妙行寺のモッコク

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30分歩いて妙行寺まで散歩。妙行寺には向かいの金毘羅堂に樹齢1100年の大カヤがあるが、境内にもう一本、樹齢600年のモッコクがある。太い幹は途中で枯れたらしく、現在は樹高7メートル。夏には黄白色の花が咲くそうだが、まだ見たことはない。妙行寺は鎌倉中期に建立された市内有数の古刹。モッコクは1407年にこの寺が臨済宗から日蓮宗に改宗されたとき植えられたとの伝説がある。

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「正元二年」(1260)の銘がある板石塔婆。

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寺の近くを流れる鴻沼水路の桜。風があり、桜吹雪が頬をなでる。

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April 04, 2019

『バスターのバラード』 コーエン流「西部開拓史」 

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The Ballad of Buster Scruggs(viewing film)

コーエン兄弟の『バスターのバラード(原題:The Ballad of Buster Scruggs)』は、もともと6本のテレビシリーズとして企画されたらしい。でもネットフリックスが配給権を買ったことで、6本をまとめて1本の映画にした。だから6本のテイストもスタイルもばらばらだけど、それが逆にオムニバス映画としての面白さになっている。コーエン兄弟のいろいろな面──陰鬱さやブラックユーモアや残酷さや、残酷を突き抜けたあっけらかん──を楽しめる。兄弟が脚本を書き、演出したコーエン流「西部開拓史」だ。

第1話はミュージカル仕立て。流れ者の凄腕ガンマンがウェスタンの名曲「クール・ウォーター」を口ずさみながら、酒場で次々に立ちはだかるカウボーイを殺してゆく。ところが、1対1の決闘であっけなく殺されてしまう。殺されたガンマンは背中に羽が生え、天使になって天に上ってゆく人を食ったラスト。

第2話は、荒野にポツンとある銀行でカウボーイ(ジェームズ・フランコ)が強盗に変身する。ところが銀行員がなぜか強く、カウボーイは捕まって絞首刑になりそうになる。やっと逃れたと思ったら、今度は牛泥棒に間違えられて絞首刑になるというオチ。

第3話は沈鬱だ。主人公は馬車を駆り町から町へ流れる旅一座の男(リーアム・ニーソン)。出し物は、男がロンドンで買った両手両足のない青年の一人芝居だ。青年はシェークスピアばりのセリフを語り、「人民の人民による人民のための政治を絶やしてはならない」とリンカーンの演説を繰り返す。だが客は少ない。窮した男は、足し算できる芸をもつ鶏を買うが、青年が足手まといになって、、、。

第4話は、それまでとはテイストが異なる。人跡未踏の谷(コーエン兄弟はじめてのデジタル撮影が見事)にやってきた金鉱掘りの老人(トム・ウェイツ)が金脈を掘りあてる。なるほど金脈はこんなふうに探していくのか。ところが老人は彼をつけてきた男に襲われる。老人は反撃。トム・ウェイツのキャラクターもあって、この挿話は美しい風景のなかで、ほのぼのした感じになっている。

第5話は、いちばんストーリー性が豊かで、いわゆる西部劇ふう。オレゴンを目指す幌馬車隊。旅の途中で兄が病死した娘は案内人の男を頼り、やがて結婚の約束をするまでに。ところが先住民の襲撃に遭い、殺されると早とちりした娘は自ら命を絶ってしまう。

第6話は、駅馬車のなかのセリフ劇。馬車の屋根に死体が載っているのがミソだ。この死体は、二人の賞金稼ぎが殺したお尋ね者。イギリス人とアイルランド人の賞金稼ぎらしからぬ身なりの二人が、ガチガチの老婦人と罪と潔白をめぐって議論し、老婦人は怒りで発作を起こしてしまう。山だしの漁師やフランス人の男がそれをなだめる。宿に着き、賞金稼ぎは死体を持って階段を上ってゆくが、果たしてあとの3人は? 

見終わって、死者累々という印象を持つ。実際、西部開拓史はそのように無数の死者の上に成り立っているのだろう。それを歴史や社会性といった側面でなく、死をめぐる残酷と皮肉のドラマに仕上げているのがコーエン流ということか。

 

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April 03, 2019

調公園で

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調宮に隣り合った調公園で。「一杯呑んだらいい気持ちになっちゃってね。いま、お隣の若い人といろいろ話してたところなんですよ」

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調宮の春祭

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30分歩いて調宮へ。境内へ入ると笛と太鼓の音が聞こえる。今日は五穀豊穣を願う春祭で、本殿で祈念の行事が行われたそうだ。

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April 02, 2019

桜散歩

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1週間の治療が終ったので、今日からは遠出の散歩に。寒の戻りで気温が下がり桜が散っていないので、毎年訪れる桜を見ながら別所沼まで。

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ご近所の庭にある桜。この向かいにカフェがあり、毎年お茶を飲みながら桜見物していたけれど、残念なことに去年閉店してしまった。コーヒー豆を焙煎して売っている店だったが、人通りが少ない道なので無理だったのか。

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10分ほど歩いたところの空地に見事な桜が7本ある。高層マンションが建てられるので伐られるかと心配したが、桜の一角は公園として残されたようだ。

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別所沼の桜。別所沼は桜の季節になると近隣の住民が花見に訪れる。今日も寒い曇り空だけど、家族づれが何組も。桜はそんなに年輪を重ねたものではないが、公園の片隅にひっそりと見事な桜が2本ある。毎年、これを見るのが楽しみ。

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一瞬だけ陽が射した。

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March 30, 2019

緑のカフェ

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散歩道にあるカフェ「野風」。木造住宅を改造したらしく、その上テーブルや椅子も木で、とてもいい感じのカフェ。ただ休みも多く午後3時には閉まってしまうので、なかなか入るチャンスがないのが難点。

今週は病院通いで、体調が安定しない。あまり遠出はせず、近所を歩く。

 

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March 27, 2019

病院で花見

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今日は通院日で、5時間の点滴。長時間なので点滴をしながら昼食の弁当を食べ、本を読み、眠くなると音楽を聞きながら寝る。今は副作用を抑えるいい薬があり、アレルギー反応も吐き気も出ないのがありがたい。終わって、構内に桜が3本ほどあるのをしばらくベンチに座って見上げる。8分咲き。

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帰りは新宿で降り、大西みつぐ写真展「まちのひかり」(~4月15日、新宿・ニコンプラザ The Gallery)へ。昭和の香りのする街と人が素材だけれど、ノスタルジアでなく人の営みの蓄積と時間を感じさせるのがいいな。

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March 26, 2019

『風の向こうへ』 O.ウェルズ、未完の遺作

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The Other Side of The Wind(viewing film)

 

『風の向こうへ(原題:The Other Side of The Wind)』は、タイトルだけ知っていたオーソン・ウェルズ監督の未完の遺作。それがネットフリックスで見られるとは思わなかった。

 

もともとこの映画は、ヨーロッパからアメリカに戻ったウェルズがハリウッドでの再起をかけて1970年から1976年にかけ断続的に撮影していた。けれども製作資金に行き詰まり、またイランを追われた前国王パーレビの縁者から資金を得ていたことから、(詳しいことはよく分からないが)裁判で撮影済フィルムの所有権は彼の手元を離れてしまった。そのままウェルズは85年に亡くなる。

 

100時間以上あったという撮影済みフィルムの権利を500万ドルで買ったのがネットフリックス。この映画に協力し、出演してもいるピーター・ボグタノヴィッチ監督が、残された脚本やメモをもとにフィルムを編集して作品に仕上げた。オリジナル映画を製作するだけでなく、こういうこともやるからネットフリックスは侮れない。

 

作品の出来は、ひとことで言えば壮大な失敗作。いかにも天才と言われつつ監督としては不遇をかこったオーソン・ウェルズらしい。

 

映画は劇中劇の入れ子構造になっている。年老いた映画監督ジェイク・ハナフォード(ジョン・ヒューストン)が人生最後の映画をつくっている。「シネマのヘミングウェイ」と呼ばれるハナフォードのまわりには、商業的に成功した映画監督でハナフォードを崇拝するオターレイク(ピーター・ボグダノヴィッチ)や映画評論家(スーザン・ストラスバーグ)など、さまざまな人間が集まってくる。彼らを相手に、ハナフォードはヘミングウェイばりに葉巻を手に酒を飲み、それらしいセリフを吐く。パーティではスタッフや取り巻きが乱痴気騒ぎを演じている。

 

ハナフォードが撮影している映画は、男と女の話。「イージー・ライダー」ふうのバイクに乗ったジョン・デール(ボブ・ランダム)が、アメリカ先住民の女性レッド(オヤ・コダール)を追いもとめる。友人が運転する車のなかで、彼らは長いセックスをする。それ以上、さしたる筋はない。デールが廃墟になった映画セットを彷徨うのは、ウェルズを受け入れなかったハリウッド批判なのか。そのジョン・デールは、撮影途中で行方をくらませてしまう。パーティの日、映画の上映会が催されるが、それが完成した映画なのか未完成のままなのかよく分からない。

 

映画製作の場面と劇中劇の場面のスタイルは対照的だ。劇中劇は、男と女の髪型、服装や鮮やかなカラー画面の流麗な映像など、当時流行っていたアメリカン・ニューシネマふう。現在から見ると、アメリカン・ニューシネマは反ハリウッドのインディペンデント精神に貫かれていたというより、あっという間にハリウッドに取り込まれ、そのスタイルもいっときの流行にすぎなかったから、オーソン・ウェルズがこだわるほどのものではなかった。

 

一方、映画製作のシーンは、即興でストーリーをつくり演出をほどこすヌーベルヴァーグふう、というかゴダールふう。実際に映画のなかでゴダールやアントニオーニ、ベルトルッチなどの名前が出てくるから、ウェルズが彼らを意識していたのは確かだろう。早いテンポで映像に、筋と関係ない早口の台詞がかぶさってくるのも、ある時期のゴダールに似ている。アメリカン・ニューシネマといい、ヌーベルヴァーグといい、1970年前後の世界の新しい映画を意識しながら、俺ならその双方を軽く超えてみせるぜ、というのがオーソン・ウェルズの心の内だったろうか。

 

映画製作の部分はほとんど自伝的というか、ウェルズのアメリカでの孤立や、少数の崇拝者のひとりボグダノヴィッチとの関係など、現在進行形の私小説めいている。『風の向こうへ』のメイキング映画『オーソン・ウェルズが遺したもの』によると、ウェルズは映画製作中に起こった出来事を、そのまま即興的に映画に取り込んでいった。実験的ではあるが、話はどんどん拡散してゆく。その上、行方不明になったフィルムもあるらしく、「shot missing」「scene missing」といった字幕が頻繁に出てくる。まあ、起承転結のある映画ではないから、部分部分を楽しめばいいのだが……。作品としての完成度は低くても(オーソン・ウェルズがこれを見たら、俺がつくりたかったのはこんなもんじゃないと怒りだすかもしれないが)、映画監督ジェイク・ハナフォード(=オーソン・ウェルズ)の孤独と苦悩だけは十分に伝わってくる。

 

ハナフォードを演ずるのは『マルタの鷹』などでハリウッドの巨匠監督として知られるジョン・ヒューストン。風貌からも実績からしても「シネマのヘミングウェイ」にふさわしい。ヒューストンは俳優としても活動しており、『チャイナタウン』で見たことはあるが、こんな素晴らしい役者だとは思わなかった。彼はハリウッドで、ウェルズの数少ない友人のひとりだった。

 

ともかく映画好きには話題満載で、オーソン・ウェルズに興味があれば『オーソン・ウェルズが遺したもの』(ネットフリックス・オリジナル映画)とともに必見の一本。

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March 24, 2019

玉蔵院の枝垂桜

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浦和でいちばん知られた桜は、この玉蔵院の枝垂桜。旧中山道の商店街から一本入った道にあるので開花すると多くの人が訪れ、しばし立ち止まって観賞してゆく。こちらも散歩と買物の帰りに足を止めてひと休み。


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