October 05, 2026

「ロベール・クートラス展」

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「ロベール・クートラス 無神論者の聖人」展(~10月7日、神楽坂・青花室)へ。

クートラスは1950~60年代に登場したフランスの画家。もともと石工だったが絵を学び、画廊と契約したがその注文に耐えられず契約を解除、以後は1985年に亡くなるまで貧窮の中で手札大のボール紙に描いた絵「カルト」や、グワッシュの人物画などを描いた。ほぼ無名だったが、近年、再評価の機運が高まっている。僕も雑誌の特集でその存在を知った。

「無神論者の聖人」とタイトルにあるように、宗教とは無縁だが、その絵は中世の宗教画のような雰囲気をたたえている。小さなカルトには中世から古代を想像させるいろんな模様が描かれている。カルトのほとんどに「僕の夜」という同一のタイトルがつけられているのは、夜の一人の想念のなかに浮かんだいろんな図像だからだろうか。人物画の多くにも「僕のご先祖さま」というタイトルがつけられ、どの絵の人物も中世ふうな衣装を着け、大きな眼とすっと通った細い鼻を持った同一人物のように見える。かつて絵描きは芸術家でなく職人だったが、芸術になる以前の手業で、クートラスというひとりの男の心に去来するイメージを絵画化したように思えた。もっとも若いころの、ユトリロふうなリヨンの風景画が一点展示されていて、これも素敵だ。

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September 27, 2026

『ルックバック』(実写版)

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『ルックバック』を見始めてすぐ、あ、これデジタルじゃなくフィルムで撮影されてるな、と気づいた。風景や人物の質感や色が違う。どこまでもクリアなデジタルに対して、フィルムは悪くいえば濁りがあり、良くいえば複雑で深い。これは優劣の問題というより、僕らの世代は小さいころから映画や写真をフィルムで見てその質感を身体が覚えているから、経験と時間の問題だろう。そんなふうに何十年もフィルムに親しんできた身として風景や人肌の微妙な色合いや光の移ろいに見惚れ、そのまま映画に入りこんだ。

小学生の少女が二人。学年新聞に4コマ漫画を描いている。自他共に認める面白い漫画を描く藤野。不登校で引きこもり、人のいない風景を描く京本。二人が出会い、二人でひとつの名前のプロ漫画家になろうとする物語。知らなかったが原作は藤本タツキの評価の高い漫画でアニメーション版もつくられているのを、是枝裕和監督が実写版として映画化した。

映像も音も、なんとも繊細。鉛筆で線を描くシュッシュッという音。事務所の窓から遠く聞こえてくる電車の音。音楽は控え目に流れる米津玄師のギター。繰り返し出てくる二人の背中ごしのショットが、漫画にうちこむ少女の覚悟を伝える。ふたりが暮らす地方の町(撮影は秋田県にかほ市)の四季の美しい風景。ふたりが出会い、嬉しくなった藤野が雨の畦道で踊り出すショットが素晴らしい。といってリアリズムでなく、途中から幻想世界が入りこみ、最後は実写がアニメーション(久野瑶子)になってしまう構成もいいな。小学生時代を演ずる七瀬ふうり(藤野役。映画初出演)と岡田六花(京本役)は素のように自然だし、成長してからの出口夏希(藤野)と蒔田彩珠(京本)もそれぞれに美しい。数か月前に公開された『箱のなかの羊』は無理が目立ったけど、この作品は是枝監督のいいところ全開。堪能しました。

 

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September 19, 2026

『琉球外交史』

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渡辺美季『琉球外交史』(講談社選書メチエ)の感想をブック・ナビにアップしました。

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August 20, 2026

『ながい窖』

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手塚治虫『ながい窖(あな)』(法政大学出版局)の感想をブック・ナビにアップしました。

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July 20, 2026

『継体天皇』

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河内春人『継体天皇』(中公新書)の感想をブック・ナビにアップしました。

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July 19, 2026

ラグビー 日本vsフランス

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ラグビー、ネーションズ・チャンピオンシップの日本代表対フランス代表戦(18日、国立競技場)。このチャンピオンシップ、ワールドカップ前年には各国が強化・セレクションのため代表戦を組むことが多いけど、それをシステム化して興業にしたということだろうか。日本代表にとってはヨーロッパの強豪と試合できるのはありがたい。

とはいえ、完敗でした。対等に戦えたのは前半の前半だけ。あとはスクラム、モール、接点の攻防、ハイボールの処理、どれもやられっぱなし。ゴール前に入られたら、ほとんど失点してた。参加12か国の最下位グループだから順当と言えば順当だけど、トップクラスとの差を見せつけられました。フランスリーグから帰ってきたスクラムハーフ、斎藤直人を久しぶりに見られたのは嬉しかった。トップチームで揉まれただけあって、安定してました。観客5万6000人。

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July 11, 2026

国会前へ

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国会前の「めちゃくちゃな政治に抗議する」デモへ。WWOF(we want our future)が主催するアクションで、先月に続いて二度目の参加。若い集団がやっているから、リズムマシーンのドラム音に乗せて叫ぶコールが音楽的で気持ちいい。前にいた女性は身体を揺らし、リズムをとりながらコールしてた。レイブに参加するノリか。前回の集会で、教育学者の本田由紀が「高市総理、そこをどけ」と発言して話題になったが、その言葉がさっそくコールに取り入れられてる。コールはほかに「武器より物価 なんとかしてよ」「まともな心の 政治がほしい」「嘘つく高市 いますぐやめろ」「あなたが総理で 恥ずかしい」などなど。主催者発表で27000人が集まった。

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July 10, 2026

『シラート』

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『シラート(原題:SIRAT)』を見て思い浮かべたのは、19世紀末、映画が誕生して間もない時期につくられた『ラ・シオタ駅への列車の到着』。駅のホームにカメラを据え、蒸気機関車が到着するのを撮った1分足らずの映画。観客は機関車がどんどん大きくなって自分に近づいてくるのに、自分が轢かれてしまうのではないかと恐れて逃げ出したという。これが事実だったかどうかは分からない。ただ、観客にそんな不安を与えるほどに、初期の見世物としての映画は驚きを与えるものだった。『シラート』は、そんな映画黎明期の驚異を再現している、と思った。特に、冒頭から最後まで大音量で流れる音楽(音響)と映像が。

アフリカの砂漠で開かれるレイブ・パーティに、中年男と小さな息子が紛れ込んでくる。男の娘が行方不明になり、探しにきたのだ。娘は見つからず、男と息子は小さな車で、次のレイブに行く2台の大型キャンピングカーについてサハラ砂漠と岩山を横断することになる。

砂漠に大型スピーカー20台以上を据えたパーティ。最初から最後まで、聴く者の心をかき乱し、不安をかきたてる重低音大音量の音楽が流れている。そしてサハラ砂漠と、そこに突き出る巨大な岩山の圧倒的な映像。映画を見ている間、その音と映像に晒される。それは映画を「鑑賞」するというより、「体験」するというに近い。地獄めぐりのような一行の旅は、今のわれわれが置かれている世界の比喩だろう。

この凄さは劇場でないと、パソコンやテレビの画面と音では体験できない。音楽・カンディング・レイ、音響・ライア・カサノバス、撮影・マウロ・エルセ、監督・オリベル・ラシェ。この名前は記憶しておこう。プロデューサーはペドロ・アルモドバル。

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July 06, 2026

『急に具合が悪くなる』

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なんだかよく分からないけど、今まで見たことのない映画を見てしまった。それが『急に具合が悪くなる』(濱口竜介監督)の3時間16分を見終わっての感想。物語の展開で観客を惹きつける大半の映画とは違うし、かといってヌーベルヴァーグ以後の反物語的な手法でもない。端正なスタイルの映画。女性主人公二人のシスターフッド映画に見えるけれど、そうくくってしまっては、この映画の大事なものを取り逃がす気もする。例えば真理が演出する劇中劇は病者と健常者にかかわるもので、それを演ずる役者は自閉症の孫を連れている。これもまた映画の核にかかわってくる。映画は主に二人の会話で進んでいくけれど、言葉をめぐる対話劇でもない。途中から肉体と肉体の接触といった、身体的なものが画面にせりあがってくる。斎藤幸平みたいな資本主義に関する哲学的議論があるかと思えば、夜のセーヌ河や京都近郊らしい山間の、なんとも美しい風景のショットがある。

高齢者施設で「ユマニチュード」という、患者の尊厳を守るケア技法を実践するマリー=ルー(ヴィルジニー・エフィラ)と、舞台の演出家でステージ4の癌を患っている真理(岡本多緒)がパリで出会う。二人がセーヌの河岸で、高齢者施設で、日本の里山の風景なかで、会話によって互いの存在への理解と共感を深めてゆく。二人が「出会うべくして出会った」その道程を、適度な距離を取りながらカメラが見ている。

後半、施設に住むことになった真理が、認知症などを患う入所者に身体を使ったワークショップを行う。それに反応した入所者や真理、介護者も入り混じって身体を触れあわせあう。いくつもの身体の部分と部分が絡みあう息をのむショットが「今まで見たこともない」という感覚を象徴していた。ヴィルジニー・エフィラ(『ベネデッタ』がよかった)と岡本多緒はカンヌ映画祭最優秀女優賞を同時受賞。

 

 

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June 24, 2026

南三陸町・高野会館

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仙台駅からバスで90分、海岸の南三陸温泉を訪れた。南三陸町は東日本大震災の津波で死者行方不明者831人という大きな被害を出している。滞在する間、民間が管理する震災遺構、高野会館を訪れることができた。高野会館は海岸から200メートルほど、町のいちばん賑やかな一角にあった4階建ての結婚式場。当日は近隣の高齢者が集まり芸能発表会が開かれていた。地震発生とともに従業員を先頭に参加者、近隣住民は4階と屋上に避難。40分後に高さ15メートルの津波が繰り返し押し寄せた。3階のフロアに立つ人の胸くらいの高さまで津波が押し寄せた跡が残っている。屋上も30センチ浸水したが、ここで一夜を明かし、327人と犬2匹の生命が助かった。現在、草原のなかに立つ高野会館の外観はそのままだが、中に入ると津波の凄まじさを語る光景が広がっている。
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高野会館から嵩上げされた国道を挟んで、町が管理する震災遺構、旧防災対策庁舎の3階建ての骨組みだけが残っている。当日、ここから避難指示を流していた女性職員が津波に吞み込まれ犠牲になったことは悲しいニュースとして全国に伝えられた。

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