「写真植字の百年」展
「写真植字の百年」展(飯田橋・印刷博物館、~1月13日)へ。写真植字(写植)というのは、金属活字を使った活版印刷でなく、字母を写真光学的に印字して版下(製版用原稿)をつくる技術。日本では昭和初期に実用化された。漢字、仮名、片仮名がある日本語の活版印刷は、活字の大小も含め膨大な種類の金属活字を必要とするから、一つの字母からどんな大きさの版下もつくれる写植はデジタルの出現まで、とても便利な技術だった。
僕が週刊誌記者になった1970年代、本文は活版印刷で印刷し、グラビアの文字は写植でつくっていた。できあがった版下に間違いが見つかると、間違った数ミリ四方の一文字をカッターで切り取り、正しく印字した字を同じ大きさに切りピンセットでつまんで糊付けする。そんな手作業が楽しかった。
展示の前半は、写植機の変遷。日本語写植機は石井茂吉、森澤伸夫という2人の技術者によって開発され、それが現在までつづく写研、モリサワになっている。写真上は写研の昭和10年の写植機。下から光を出して文字盤に当て、レンズ(細い管が何本もある円盤部分)を通して上部にある印画紙に焼き付ける。この時代、モニターはもちろん、カメラのファインダーに相当する装置もないから、正しく印字しているかどうか目で確認できず、ほんとうに職人技だったろう。
後半は、さまざまな写植用書体の展示。基本的な明朝体、ゴシック体だけでなく、いろんな書体が開発されて広告やデザイン、雑誌に使われた。 活版印刷は活字を組むから、字を原稿用紙のように規則正しくしか配置できないが、写植だと自由に配置できるからグラフィックデザインは写植によって大きく発展した。写真下は大日本印刷の秀英明朝という美しく定評ある活版用活字を、写研が写植用に開発した製品の見本。
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